最初に“査定”から始めると、なぜ後悔しやすいのか

不動産のことを考え始めたとき、多くの方が最初に取る行動があります。
それが、「とりあえず査定をしてもらう」という選択です。

インターネットで検索すると、
「無料査定」「簡単30秒」「今いくらで売れるか」
といった言葉が並び、自然と「まずは価格を知ることが第一歩」と思わされます。

この行動自体は、決して間違いではありません。
むしろ、真面目で慎重な姿勢だと思います。

ただ、私たちが伏見区や山科区で多くのご相談を受けてきた中で、
「最初に査定から入ったことで、後から違和感が残った」
という声を、少なからず耳にしてきました。

査定を依頼すると、不動産会社は

  • 立地
  • 築年数
  • 広さ
  • 過去の取引事例

などをもとに、「金額」を提示します。

すると、人の思考は一気に変わります。

それまで

「この家、これからどう使っていこうか」
「夫婦二人には、少し広すぎるかもしれない」

と考えていたはずなのに、頭の中が

「この金額で売るべきか、売らないべきか」
という二択に切り替わってしまうのです。

これは、誰が悪いわけでもありません。
人は“数字”を目の前に出されると、それを基準に判断してしまう生き物だからです。

問題は、金額が早く出すぎることです。

伏見区の静かな住宅街に、築45年ほどの戸建てがあります。
昭和の分譲地で、当時は「広い家」が理想とされた時代に建てられた家です。

お住まいのご夫婦は60代。
お子さんは独立し、今は夫婦二人暮らし。
2階はほとんど使っておらず、掃除も年々大変になってきたそうです。

「そろそろ、この家のことを考えないといけないですね」

そう思われ、インターネットで見つけた不動産会社に査定を依頼されました。

提示された金額を見て、ご主人はこう言われました。
「この値段なら、売るしかないですね」

でも、よく話を伺うと、

  • この街が気に入っている
  • ご近所との関係も良好
  • 本当は、急いで引っ越したいわけではない

そうした気持ちが、たくさん出てきました。

それでも一度「価格」を基準に考え始めると、
「売らない=損をする」
という感覚が頭から離れなくなってしまうのです。

ここで誤解してほしくないのは、査定そのものが悪いわけではないということです。

査定は、本来
「今、売った場合の目安を知る」
ためのものです。

ただし、それは
人生の選択肢を整理した“あと”に使う道具
であって、最初に使うものではないケースも多いのです。

特に、子育てを終えた世代の住まいは、

  • 売却
  • 住み替え
  • 家を小さくして住み続ける
  • 今は何もせず、数年後に考える

など、選択肢が一つではありません。

にもかかわらず、最初に金額だけを見ると、それ以外の道が見えにくくなってしまいます。

家は、確かに大きな資産です。
ですが同時に、毎日を過ごす場所でもあります。

  • 朝、どんな光で目覚めたいか
  • どこでコーヒーを飲みたいか
  • 掃除や管理を、無理なく続けられるか

こうしたことは、査定書には書かれていません。

それでも、これから先の暮らしを考える上では、金額以上に大切な要素です。

不動産の話になると、
「今すぐ決めなければ」
という空気を感じる方が多いですが、そんなことはありません。

査定を取らなくてもいい。
売ると決めなくてもいい。
まずは
「これから、どんな暮らしをしたいか」
を整理するところから始めてもいいのです。

住まいの判断は、早さよりも、後から振り返ったときの納得感が大切です。

この記事が、
「査定を取る前に、少し立ち止まって考えてみよう」
そう思うきっかけになれば幸いです。

次の記事では、
「今が売り時です」と言われたときに、なぜ注意が必要なのか
について、もう少し踏み込んでお話しします。