この家を、誰のために残そうとしていますか?

― 売る前に、少しだけ立ち止まって考えてみてください ―
空き家の相談をしていると、最後にこの質問を投げかけることがあります。
「この家を、誰のために残そうとしていますか?」
すぐに答えられる方は、ほとんどいません。
多くの方が、少し黙り込まれます。
それは、この質問が「不動産」ではなく、人生そのものに触れているからだと思います。
「売る・売らない」よりも前にあるもの
空き家の話になると、どうしても結論を急ぎがちです。
- 売るべきか
- 売らないべきか
- 今なのか、まだなのか
でも、現場で感じるのは、結論そのものよりも、そこに至る“整理”が足りていないということです。
整理されていないまま決めると、あとから、必ず迷いが残ります。
「本当に、これでよかったんやろか」
その言葉を、私たちは何度も聞いてきました。
親のため、という気持ち

「親が大事にしていた家だから」
「簡単に手放していいのかわからなくて」
そう言われる方は、とても多いです。
親の気配が残る家。
壁についた傷。
使い込まれた建具。
それらを前にすると、合理的な判断だけでは割り切れません。
でも同時に、親御さんは、「子どもが苦しむこと」まで望んでいたでしょうか。
この問いに向き合うことは、とてもつらいですが、避けては通れない時間でもあります。
子どものため、という思い込み
「子どもに残せたら」
「いつか使うかもしれないから」
そう考えるのも、自然なことです。
でも、実際に子ども世代に話を聞くと、こんな声も少なくありません。
「正直、住む予定はない」
「維持するのは大変そう」
善意で残したつもりの家が、次の世代の“重荷”になることもある。
これは、決して珍しい話ではありません。
実は、自分のため、という答え

話を重ねていくと、最後に、こんな言葉が出てくることがあります。
「自分が、決めきれなかっただけかもしれません」
空き家を残している理由は、
- 忙しかった
- 考えるのがしんどかった
- 間違えたくなかった
つまり、自分を守るためだった、ということもあります。
それは、悪いことではありません。
人として、とても自然な感情です。
ただ、そのまま時間が過ぎると、守っていたはずの自分が、逆に、空き家に縛られてしまう。
そんなケースを、私たちはたくさん見てきました。
空き家は「決断」より「対話」が先
ここまで読んで、
「じゃあ、どうすればいいのか」
そう思われたかもしれません。
でも、答えは意外とシンプルです。
いきなり決めなくていい。
まず、話せばいい。
- 今、何が一番しんどいのか
- 何に迷っているのか
- 何を守りたいのか
それを言葉にするだけで、空き家の見え方は、少し変わります。
「まだ大丈夫」と思っている今こそ

多くの後悔は、「問題が起きてから」生まれています。
- 家が傷んでから
- 兄弟関係がこじれてから
- 選択肢が減ってから
その前にできることは、実は、たくさんあります。
「まだ大丈夫」
そう思えている今は、一番、動きやすいタイミングです。
私たちが、大切にしていること
私たちは、空き家を「売るため」だけに関わっていません。
- 売る
- 売らない
- 貸す
- 整える
どの選択にも、その人なりの正解があります。
だからこそ、最初から結論を求めない。
人生の話として、住まいを考える。
それが、私たちのスタンスです。
この家を、誰のために残そうとしていますか?
答えが出なくても、大丈夫です。
迷っていても、かまいません。
でも、その問いを胸にしまったまま、時間だけが過ぎていくのは、とてももったいない。
空き家は、過去と、今と、これからをつなぐ存在です。
だからこそ、一人で抱えず、誰かと一緒に考えてほしいと思っています。
「まだ大丈夫」と思っている今こそ、話しておく価値があります。
売却査定ではありません。
空き家について話すだけの相談を、承っています。


