2階にほとんど上がらなくなった家で、暮らし続けるという選択

「最近、2階にはほとんど上がっていないんです」
これは、私が伏見や山科でご相談を受ける中で、本当によく聞く言葉です。

子育て中は、当たり前のように使っていた2階。
子ども部屋があり、洗濯物を干し、家族がそれぞれの時間を過ごしていた場所。
それが今では、物置になっていたり、年に数回しか使わなかったりする。

それでも多くの方は、
「家はこういうものだから」
「そのまま住み続けるしかない」
と、特に疑問を持たずに日々を過ごされています。

でも私は、その『上がらなくなった2階』こそが、暮らしを見直す大切なサインだと思っています。

2階に上がらなくなった理由を伺うと、皆さん決まってこう言われます。

  • 階段がしんどくなった
  • 用事がない
  • 1階だけで生活が完結している

どれも、もっともな理由です。
そしてそこには、「無理をしていない」という共通点があります。

人は、必要のないことを自然とやらなくなります。
それは怠けているのではなく、今の自分に合った暮らし方へ、体が調整しているのだと思います。

それでも多くの方が、「2階を使っていなくても、このままでいい」と考え続けます。

理由は、とても人間的です。

  • まだ住めるのにもったいない
  • 建てた当時の思い出がある
  • 何か決断をするのが面倒
  • 売る話になるのが怖い

特に最後の「売る話になるのが怖い」という感情は、とても大きい。
だからこそ、誰にも相談せず、違和感を抱えたまま年月が過ぎていきます。

ここで、はっきりお伝えしたいことがあります。

2階を使っていない=引っ越さなければならないというわけではありません。

実際、私が関わってきた中でも、「この家で、これからも暮らしたい」という方はたくさんおられます。

ただし、条件があります。
それは、今の暮らしに家を合わせることです。

伏見区にお住まいの60代ご夫婦。
昭和50年代に建てられた、4LDKの木造住宅でした。

2階には子ども部屋が2つ。
今は空き部屋で、ほとんど上がることはありません。

ご相談の最初、ご夫婦はこう言われました。
「売るほどでもないし、でもこのままも何だか…」

私が最初にしたのは、売却や工事の話ではありません。

「今、1日のほとんどはどこで過ごされていますか?」
そうお聞きしました。

答えは、「ほぼ1階だけです」と。

そこで、「だったら、1階だけで無理なく暮らせる形を考えてみませんか」という話になりました。

2階をどうするかは、すぐには決めません。
使わないなら使わない前提で、掃除や管理の負担を減らす方法を一緒に整理していったのです。

このご夫婦が安心されたのは、「今すぐ何かを決めなくていい」とお伝えしたときでした。

私は、決断のお手伝いではなく、
“考える時間”のお手伝いをしたいと思っています。

この言葉をお伝えすると、多くの方が、ふっと肩の力を抜かれます。

決めなければいけない、と思うから苦しくなる。
でも実際には、考えるだけの時間があってもいいのです。

家は、建てた瞬間が完成ではありません。
家族の形が変わり、体の感覚が変わり、暮らし方が変われば、家との付き合い方も変わって当然です。

2階に上がらなくなったことを、「衰え」や「マイナス」と捉える必要はありません。

それは、これからの暮らしを考え始める合図なのだと思います。

もし今、
「売るつもりはないけれど、このままでいいのか少し不安」
そう感じておられるなら、その感覚はとても大切です。

無理に答えを出す必要はありません。
誰かに話し、言葉にするだけで、見えてくることがあります。

私はこれからも、決断を急がせることはしません。
ただ、一緒に考える時間を大切にしたいと思っています。

2階にほとんど上がらなくなった今こそ、これからの暮らしを、静かに見直すタイミングなのかもしれません。