「もう年だから」と住み替えをあきらめてしまう

― 実は、判断を止めてしまっているだけかもしれません ―

「もうこの歳やし、今さら引っ越しはしんどい」
「環境を変えるのは、若い人の話やろ」

住まいの相談をしていると、この言葉を口にされる方は、とても多くいらっしゃいます。

特に、子育てを終えた60代、70代の方にとって、“住み替え”は現実的な選択肢から外れやすいものです。

けれど、その判断は本当に「考えた上での結論」でしょうか。

それとも、考える前に、選択肢から消してしまっているだけではないでしょうか。

例えば、こんなことはありませんか。

  • 階段の上り下りが、正直つらい
  • 冬の寒さが、以前よりこたえる
  • 家の中で動く距離が、負担になってきた

それでも、
「歳を取ったら、そんなもんや」
「みんな我慢してる」

そうやって、暮らしの不便を“年齢のせい”にしてしまう

けれど、その不便さは、本当に年齢だけの問題でしょうか。

住まいの不便さは、体だけでなく、気持ちにも影響します。

  • 出かけるのが億劫になる
  • 家で過ごす時間が、なんとなく重たい
  • 「まぁいいか」が増えていく

こうした変化は、少しずつ、静かに進みます。

そして気づいたときには、「変えるのが怖い」状態になってしまうのです。

「住み替え」と聞くと、多くの方が、こんなイメージを持たれます。

  • 新築を建てる
  • 駅近のマンションに入る
  • 大きなお金が動く

だから、
「そんな大げさなことは考えていない」
と、最初から距離を取ってしまう。

でも実際には、住み替えの形は、もっと小さくて、もっと現実的です。

  • 管理しやすい中古住宅
  • 静かな環境の小さな家
  • 平屋、もしくは1階中心の暮らし

“今の自分に合う場所へ移る”
それだけでも、立派な住み替えです。

意外に思われるかもしれませんが、私たちは、こう考えています。

住み替えは、若い人のためだけの選択ではない。

むしろ、

  • 体力の変化を感じ始めた
  • 暮らしのサイズを見直したい
  • 残りの時間を、穏やかに過ごしたい

そう感じ始めた年代だからこそ、住み替えが意味を持つ場合も多いのです。

「ここが終の棲家やと思って建てた」
そうおっしゃる方も、たくさんおられます。

ですが、
終の棲家=一生変えてはいけない場所
ではありません。

人生が変われば、体も、気持ちも、暮らし方も変わります。

それに合わせて、住まいを調整することは、決して後ろ向きな判断ではありません。

京都市内やその近郊では、こんなご相談がよくあります。

「家は好きやけど、坂がきつい」
「静かすぎて、外に出るのが億劫」
「車がないと生活しにくい」

こうした悩みは、家そのものよりも、“場所”との相性が原因のことも多い。

少し場所を変えるだけで、暮らしやすさが大きく変わるケースもあります。

私たちは、住み替えを「勧める」ことはしません。

ただ、あきらめる前に、選択肢を知ってほしいと思っています。

  • 今の家で、できること
  • 少し変えることで楽になること
  • 場所を変えた方が合う場合

これらを並べた上で、「今は動かない」という判断をされるなら、それも立派な選択です。

「もう年だから」という言葉は、自分を守るための言葉でもあります。

けれど同時に、可能性を閉じてしまう言葉でもあります。

判断を急ぐ必要はありません。
でも、判断を止めてしまう必要もありません。

住まいは、「これまで」を支える場所であり、「これから」を受け止める場所でもあります。

もし今、今の暮らしに小さな違和感があるなら、それは考え始めていい合図かもしれません。

住み替えるかどうかは、その先の話です。

まずは、あきらめずに、考えてみること。

それだけで、これからの暮らしは、少し違って見えてきます。